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1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 22:40:44.35 ID:kc7LArt20
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男「……2000歳か」
妖狐「正確に言えば2000とんで12歳じゃ!」
男「丁度ADなのな」
妖狐「よう意味がわからんが、大体そうじゃ」
男「見た目は丁度12歳くらいなのになぁ……」
妖狐「それは失礼ではないかの?仮にも妖怪じゃぞ?」
男「ごめんごめん、最近の12歳はもっと発育いいわ」
妖狐「おい貴様、わしをディスっとるじゃろ」
男「何でそんな最近の言葉知ってるの」
妖狐「かーっ!これだから最近の若いもんは!老人は最近の事を何もしらんと思っておる!」
男「そうじゃないの?」
妖狐「AKBのメンバーを全員言えるぞ?わし」
男「それは違うよな!?」
6:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 22:45:22.99 ID:kc7LArt20
妖狐「どうじゃ?最近のナウいことまで知っとる年上のわし!最高じゃろ!?」
男「年上なのは認めるがなぁ……」
妖狐「なんじゃその腑に落ちないような表情は」
男「もっとこうスタイルが」
妖狐「……だっれがつるぺたじゃ!その口を引き裂いてやろうか!?」
男「まだ何も言ってない!」
妖狐「ええか!?わしだって数百年も前はもっとボンキュッボンだったんじゃ!」
男「え?なんでじゃあ幼女になっちゃったの?」
妖狐「幼女言うな!せめて少女と言わぬか!」
男「じゃあなんで少女になっちゃったの?」
妖狐「それには海よりも深く山よりも高い理由があるのじゃ」
男「話すと長くなる?」
妖狐「そうじゃのう、まずは大仏建造の話から」
男「すみません一行でお願いします」
妖狐「妖力が減ったんじゃ」
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 22:49:11.68 ID:kc7LArt20
男「すごく簡潔な説明ありがとうございます」
妖狐「人間の姿が仮の姿であることはおぬしも知っておるであろう?」
男「ええまぁ」
妖狐「だがわしらの場合、狐の姿が本物というわけでもないんじゃ」
男「えっ?」
妖狐「なんというかあやかしとは半端なものでの、基本的には仮の姿でしかおられんのじゃ」
男「どういうこと?」
妖狐「まぁおぬしのようなうつけにもわかるように説明すると、『見る人間のイメージに左右される』ということかのう」
男「ああなるほど……だからオタクな俺にはなんというかアニメちっくな少女に」
妖狐「うむ。狐にトラウマがある人間なら恐ろしい化け物の姿に見えるぞ」
男「じゃあ実際はどんなんなの?」
妖狐「わしに聞くな。わしは鏡ができてからしか自分の姿を知らんし、近くにいる人間によってちまちま変わってきた。実際の姿なぞ持っておらん。ただ」
男「ただ?」
妖狐「正直この姿に慣れ親しみすぎてもう他の姿を忘れてしまった」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 22:55:18.87 ID:kc7LArt20
男「……じゃあ、いいんじゃね」
妖狐「もとよりわし、姿とかそこまで気にしておらんしのう。貴様みたいなのがいなければ」
男「なんでだよ」
妖狐「ボンキュッボンがどうとかうるさかったのは2000年の歴史をひも解いても貴様だけじゃ。他の者はわしにひれ伏し、教えを乞うたものじゃ」
男「そんなすごいの?」
妖狐「当たり前じゃろ!?創世記からおるんじゃぞ!?色々できるんじゃぞ!」
男「例えば何ができんの?」
妖狐「地脈を操り火山を噴火くらいなら今でもできるのう」
男「……ヤベェ」
妖狐「昔は雨を降らすこともできたぞ。干ばつから洪水まで思いのままじゃ」
男「ヤベェ!!」
妖狐「どうじゃ?尊敬したか?」
男「尊敬しました」
妖狐「そうじゃろうそうじゃろう!なんか献上しろ!」
男「はいじゃがりこ」
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:02:26.44 ID:kc7LArt20
妖狐「うまうま。近代は菓子もうまくなったのう」
男「昔はまずかったの?」
妖狐「カカオ70%とかあるじゃろ」
男「あるね」
妖狐「あれを100倍苦くしたのがチョコレートとか言われておった」
男「マジかよ」
妖狐「砂糖を入れてなかったからの。というか昔は砂糖は超高級品じゃ」
男「ええ!?」
妖狐「甘味料ではなく、薬用として使われておったなぁ。しかも、一部の上流階級だけじゃぞ」
男「すげぇな砂糖」
妖狐「調味料なんてだいたいそんなもんじゃぞ。今は良い時代じゃ」
男「まぁ日本に限ったことかもしんないけどな」
妖狐「わしはこの辺り以外良く知らんからのう。そのあたりは他の奴らに聞いてくれ」
男「他の奴らって?」
妖狐「知らんか?ラファエルとかおらんかったか?」
15:>>11 サンクス!!:2012/08/26(日) 23:11:03.26 ID:kc7LArt20
男「それ妖怪じゃねぇから!!天使だから!」
妖狐「違いがようわからんのだが」
男「天使は神からの使いで、お前らはえーと……なんだ?」
妖狐「概念であるわしらに明確な存在なぞないぞ」
男「わ、わかりづらっ!」
妖狐「そして小僧、何を勘違いしておるかしらんが、神や天使やなんやらと分けようと、結局は同じじゃぞ」
男「えっ」
妖狐「わしらは存在としての存在ではないからの。概念上にのみ存在する。いわば空想の産物……ちと小僧には難しいか」
男「さ、さすがにわからん……」
妖狐「幽霊の正体見たり枯れ尾花、というじゃろう?わしらはおぬしらに存在を定義されて初めて明確な存在となるのじゃ」
男「でも人間は神様が作ったとか言ってたよな」
妖狐「たとえばの話じゃ」
男「ん?」
妖狐「何もない所を指して、『ここに人がいる』と言ったらどうなると思う?」
男「頭おかしいって言われるんじゃね?」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:15:09.94 ID:kc7LArt20
妖狐「そうじゃな。しかしそれを、世界全員が信じたとするとどうなる?」
男「え?」
妖狐「そこには人は存在しない。しかし全員が『存在する』と言えば、それは存在するのとは同じではないかの?」
男「ま、まぁ……」
妖狐「まぁそういう感じだと思ってくれれば良いの。だから有名な妖怪なんかは強く表現され、無名な妖怪は弱いとか言われるんじゃ」
男「確かに、漫画とかでも有名な奴は強いよな。サタン様とか」
妖狐「あいつは確かに協力じゃのう。馬鹿じゃが」
男「えっ」
妖狐「会えばわかるぞ」
男「会いたくはないけど、ちょっと会ってみたくなる」
妖狐「まぁ普通の人間が会うと死ぬかもしれんしな」
男「前言撤回絶対会わねぇ」
妖狐「まぁ地獄の奥底に行く用事がなければ会うことはないの」
男「よかった」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:22:02.80 ID:kc7LArt20
男「じゃあ俺そろそろ帰るね」
妖狐「そうじゃの、行くか」
男「お前ん家ここじゃなかったの」
妖狐「依り代の事か?確かにここじゃな」
男「うごけんの?」
妖狐「わしを地縛霊どもと一緒にするでない」
男「そんなこと言うと地縛霊怒るぞ」
妖狐「そんな時はわしのあやかしスラッシャーでスパーンじゃ」
男「(なにそれちょっとかっこいい)」
妖狐「ほれいくぞ小僧、お前の家はどっちじゃ」
男「え、俺ん家くるの」
妖狐「おぬしは自分の家に帰らん気か?……はっもしや女の家に寝泊まりしているというのか!?このヒモ!」
男「ヒモじゃねーし寝泊まりもしてない。どこでそんな言葉覚えてくるんだよ……」
妖狐「ananじゃ」
男「本当最近の事に詳しいなお前!!」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:26:46.02 ID:kc7LArt20
男「ていうかお前ん家神社なんだから、ここにいちゃダメなのか」
妖狐「もちろんかまわんの」
男「じゃあなんで来るんだよ」
妖狐「もっとお話ししたいんじゃ!見りゃわかるじゃろう!?」
男「わかんねーよ!てか素直で可愛いな!」
妖狐「もっと褒めろ!」フンス
男「そういう態度の子には褒めません。てかなんでそんな話したいんだよ。あれか?おばあちゃんだからか?」
妖狐「おばあちゃんというな妙齢の女性と言え」
男「ちょっといい言い方にしようとしてんじゃねーよ」
妖狐「おぬし次いつくるかわからんのじゃもん……」
男「まぁ今日来たのも気まぐれですし」
妖狐「じゃろ。じゃあ連れてけ」
男「えー、年上のボンキュッボンのお姉さんがいいー」
妖狐「というかボンキュッボンって古いのう」
男「お前に言われたくねぇ!!」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:32:20.38 ID:kc7LArt20
男「ていうかお前はなんでそんなに俺にこだわる」
妖狐「は?」
男「は?って」
妖狐「お前、わしが見えるんじゃろ?」
男「当たり前じゃん」
妖狐「わしと話せるんじゃろ?」
男「当たり前じゃん」
妖狐「正直、もう何年振りかわからん」
男「えっ」
妖狐「行ったじゃろ?わしらは『概念』であって『存在』ではない」
妖狐「認めてもらえば存在できる。気付けてもらえば存在できる」
妖狐「しかし最近の、こんなに科学の進んだ日本で、わしの存在を認めようとする奴などおるかの?」
男「そりゃ……いるんじゃないの」
妖狐「心からじゃ」
男「心から、ねぇ……」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:35:22.11 ID:kc7LArt20
妖狐「心の底から、一切の疑いを持たず『妖怪は存在する』」
妖狐「そう思っておる人間がどれだけいるか、ということじゃ」
男「……ほとんどいないだろうな」
妖狐「そりゃそうじゃの。わしらは所詮ファンタジー。おぬしらには理解できぬ存在よ」
男「まぁここにこうやっているんだけどな」
妖狐「そんなセリフを吐けるのも、おぬしが特別じゃからじゃろう?」
男「別に特別でもなんでもねーよ」
妖狐「臭いを嗅げばわかる。おぬしは退魔師、そうじゃろう?」
男「ニアミスってとこかな」
妖狐「ほう、その心は」
男「俺のご先祖様は、退魔師とかそんなんだったらしいよ」
妖狐「由緒正しい家系じゃな」
男「でも数百年も前になくなってる。親父は今、不動産やってるよ」
妖狐「悪くない選択じゃな」
男「流石にわかるのか」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:37:56.00 ID:kc7LArt20
妖狐「どうせ、土地神に口利きでもしておるのじゃろうて」
男「ぶっちゃけそうです。ごめんなさい」
妖狐「ついでに、いわくつきの家を祓って売っておるじゃろ」
男「その通りです。てかよく御存じで」
妖狐「力は弱かろうと、退魔師の家系。そのくらいはできるじゃろう?わしだって同じようなもんじゃしな」
男「腐っても妖狐ってか」
妖狐「腐ってはおらんぞ」
男「みりゃわかる」
妖狐「ぴっちぴちじゃ!」
男「……確かに」
妖狐「今、ちょっとときめいたじゃろ」
男「ときめいてはない」
妖狐「では欲情かの?」
男「否定しきれないのが悲しいとこだな」
妖狐「ふふふ、いいぞ?おぬしなら」
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:42:09.78 ID:kc7LArt20
男「どういう意味だよ」
妖狐「据え膳も食えぬのか?このヘタレめ」
男「それはもうちょっと仲良くなってからじゃないですかね」
妖狐「ああ、そういうものじゃったか?すまぬ、わしには時間の感覚というものがよくわからん」
男「まぁ2000年も生きてりゃなぁ……」
妖狐「数百年程度のことなら、ついこの間のように覚えておる。そうかと思えば、随分長い事誰とも話してないような気さえする。十年ほど前に一度、人と話したはずなんじゃがの」
男「それは俺にはよくわからんな」
妖狐「わかる日が来るとは思えん。わかってもらおうとおも思わん。それがわしらとお前らの違いじゃ」
男「そういえばさ、ちょっと酷い質問かもしれないけど」
妖狐「なんじゃ?わしらはそういう事で傷ついたりせんから、なんでも聞いてよいぞ」
男「仲良くなった人間が死ぬのって、どういう気分?」
妖狐「どうもこうもないじゃろう。死んだ後、いなくなってしまうのはつらいが」
男「……あと?」
妖狐「幽霊になればむしろわしら側じゃしの」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:45:58.25 ID:kc7LArt20
男「ああ、そういうことね……」
妖狐「仲の良かった元人間が成仏してしまったときは、なんとも言えない虚無感に襲われる。人間もいつか成仏するものじゃしな……」
男「死ぬのは気にしないんだな」
妖狐「死の概念がないわしらからすればよくわからん。体を失うだけじゃろ」
男「さすが妖怪言う事が違う」
妖狐「存在そのものを失ってしまうことに比べれば安いものじゃて。おぬしも死んでみるか?」
男「それはちょっと、もう少し時間をおいてからかな」
妖狐「そうじゃな。わしへの献上品がなくなっては困る」
男「別にお前に何か献上しようなんて思ってないぞ」
妖狐「えっ……」シュン……
男「……(クソッ!!耳をたらすな!!可愛いだろうが!!)」
男「……ま、まぁたまには何か差し入れてやってもいいかな」
妖狐「わーい!わしおぬし大好きじゃ!」
男「軽いな本当!」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:50:00.67 ID:kc7LArt20
男「これで俺がロリコンだったらなぁ……」ハァ
妖狐「こらこら溜息をつくでない、幸せが逃げるぞ」
男「そんな迷信……」
幸せ「お世話になりました」
男「って本当に逃げてる!!待って!!」
妖狐「そりゃわしと一緒じゃからな。迷信も本当になるぞ」
男「えええ!?」
妖狐「おぬしの霊力が法力か妖力か知らんが、どうやらわしのせいで活性化してるみたいじゃしの」
男「なにそれ!?」
妖狐「連鎖反応という奴じゃ。ホラー映画を見た後壁のシミが幽霊に見えるのと似たようなものと考えればよい」
男「それとこれとは話が違うような……」
妖狐「だから似たようなものと言っておるじゃろう。ほら早くせんといなくなるぞ」
幸せ「今までありがとうございました」
男「ま、待ってーーー!!」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:53:52.32 ID:kc7LArt20
妖狐「すばらしい動きじゃったの」
男「体育の成績は悪くないからな……」
幸せ「今後ともよろしくお願いします」
男「しかしこんなことが次々起こるのか……困るな」
妖狐「しょせん迷信は迷信じゃぞ。本気で否定してやれば消滅する」
男「へえ、そんなもんなのか」
妖狐「たとえば口笛を吹いて蛇を呼ぶじゃろ?その後『こんな都会に蛇がいるか!!』って本気で思ってやれば消滅するぞ」
男「ここ田舎だからできねぇわそれ」
妖狐「じゃあ諦めて噛まれようぞ」
男「それは嫌」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:55:33.23 ID:HYsuxuaK0
おもしろいな
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:57:57.67 ID:IC3qnwtG0
幸せにワロタ
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/26(日) 23:58:06.37 ID:kc7LArt20
妖狐「ここか!」
男「しまった、着いてしまった……」
妖狐「これから世話になるぞ」
男「住む気!?」
妖狐「え?うん」
男「そこだけ年相応にしてんじゃねぇよ!!」
妖狐「なら他にわしと話せるものを見つけて見せろ!」
男「それは屏風の虎をだす感じだよ妖狐さん」
妖狐「妖怪バトルファンタジーとかならここでたくさんでてくるんじゃがのう」
男「残念ながら俺に戦闘能力はない」
妖狐「ほう、ためしてみるかの?」スッ
男「やめてくれ、ボコられる未来しか見えない」
妖狐「まぁスッとかやったが、わしも基本的には見た目程度の戦闘力しかないがの」
男「妖狐なのに!?」
妖狐「しょせんは狐じゃ。噛んだりひっかいたりはできるがの」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:01:09.10 ID:SsdJRrLU0
男「地脈操って火山どーんとかできるじゃん」
妖狐「ここから100km先の火山とか噴火させておぬしにダメージが与えられるのかの」
男「ええ?意外としょぼいんだな」
妖狐「……」イラッ
ザワッ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!!
男「!?」
男「で、できるんじゃねーか!?な、なにしてんだ!?」
妖狐「くくく……しょぼとかのたまいおった罰じゃ」
男「一体何が……くしょん!?」
妖狐「苦しめ苦しめ」
男「おまっ、なにしっくしょん!へっぶし!」
妖狐「付近の森を活性化させて花粉を放ち、風を呼んだ」
男「おまえけっこうすごっくしょん!ぶし!へっち!」
妖狐「すごかろうすごかろう」
37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:02:19.91 ID:SsdJRrLU0
男「止めて!ぶし!死ぬ!っくしょい!」
妖狐「え?無理じゃけど?」
男「てめぇ後で殺す!!っくしょん!!」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:04:48.27 ID:SsdJRrLU0
―――
男「家に入ってなんとか収まった……」
妖狐「よくよく考えれば家の前で何してたんじゃろうなわしら」
男「なんとかお前を追い返せないかと画策してたんだけどな」
妖狐「おぬし意外とひどいの」
男「お前が巨乳なら話は違ったんだけど」
妖狐「貴様、噛むぞ」
男「(なんか噛まれても痛くなさそうということは黙っておこう)」
妖狐「そういえばおぬしは理解しておるとは思うが」
男「ん?」
妖狐「今回のすべての言動、周りから見ればおぬしの独り言じゃぞ」
男「っべぇえええ忘れてたぁあぁぁ!!」
妖狐「明日からちょっと可哀想な人を見る目で見られるの」
男「学校行きたくない」
妖狐「夏休みじゃろうて?」
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:10:57.85 ID:SsdJRrLU0
男「だから猶更だよ」
妖狐「ああ……夏休みまえはあんなに親しげだった友人たちが、何故か夏休み明けに『お、おはよう……』と若干目を合わせてくれないという」
男「かなりリアルに再現すんな!?」
妖狐「さらに仲のいい女友達だったはずのあの子が別の男友達とやけに仲が良くて『あれ……いつの間に?』という展開かの」
男「やめろ!!夏休み後あるあるを言うんじゃねぇ!だからどっからひっさげてくるんだその知識は!」
妖狐「雑誌の投稿欄じゃ」
男「まぁそこだよね。ってかお前らネットは使わないんだな」
妖狐「ネットか……うーむ、あまり得意ではないのう。勝手に人の家に入って触るのも躊躇われるし……」
男「じゃあどうやって雑誌読んでんだよ……」
妖狐「神主のとこの娘の雑誌じゃ」
男「ああ、納得……」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:11:13.33 ID:NxElQJ7d0
ろりばばあの一人称は「わらわ」派
42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:16:36.58 ID:sHXorulx0
>>41
同志よ・・・!
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:17:01.91 ID:SsdJRrLU0
妖狐「わらわ派かの……水神の奴が喜びそうじゃの」
男「え?なんの話?」
妖狐「こっちの話じゃ」
男「お前ってなんとなく知識が偏ってそうなイメージだよな」
妖狐「失礼な。あとお前とはなんじゃお前とは」
男「え、お前駄目?」
妖狐「せめて、第八土地順守霊神九尾のあやかし狐様じゃろ」
男「長い!!」
妖狐「じゃあ妖狐さんでいいぞ」
男「最初からそれに許可をだしてくれ。あとお前土地神の系譜なの?」
妖狐「だからお前言うなと。あとさっきのは適当じゃて」
男「適当かよ!」
妖狐「わしもなんかかっこいい名前欲しかったんじゃ!」
男「気持ちはわかるけど!」
45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:22:14.71 ID:SsdJRrLU0
男「それにしてもさっきからラファエルとかサタンとか水神とか、いろいろ出てくるよな」
妖狐「ん?興味でもあるのか?」
男「いやサタンとかは絶対会いたくないけど、そういうレアなのって何か会いたくない?」
妖狐「ぶっちゃけ言うとのう」
男「微妙に若者だな」
妖狐「おぬしら、会ってても気づいてないが大半じゃぞ」
男「ええ!?」
妖狐「波長とかそういうのも関係してるんじゃと。おぬしは退魔師だから妖との相性がいいんじゃ。逆に天使と呼ばれる輩どもは信仰心の強い物の前に現れるとか」
男「ああ、なるほど……」
妖狐「ヨーロッパ圏では天使の目撃情報とかもあるじゃろ?」
男「まぁガセっぽいけど」
妖狐「それでも、火の無い所に煙はたたぬ。信仰心のたまものじゃて」
男「若干の意味の違いはあるがな」
妖狐「だから、おぬしにも会えるものと会えないものがおる」
男「なるほどなぁ。ちょっとさびしいな」
46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:24:47.38 ID:SsdJRrLU0
妖狐「例えばあってるけど気づいてない代表がおる」
男「誰?」
妖狐「付喪神じゃ」
男「あー……ぽい」
妖狐「本当はおぬしらにすごいアピールしてるんじゃけどな。気付いてもらえとらん」
男「なんか切ない」
妖狐「仕方ない。ある種、住む世界が違うんじゃ。いつも使ってるものを大事にしてやれ。たまには手入れしてやれ。そのうちいいことが起こるぞ」
男「靴とかも磨いてみるかなぁ」
妖狐「そうしてみろ。一番身近な神なのじゃからな。大切に扱えよ」
男「うーむ。なんとなく説得力あるなぁ」
妖狐「じゃろ!?わし凄いじゃろ!?」
男「無い胸を張られてもなぁ」
妖狐「しばくぞ小僧」
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:30:37.08 ID:SsdJRrLU0
男「あれ?精霊で思いついたんだけど」
妖狐「どうした?」
男「ボンキュッボンの妖怪を探しにいけばいいんじゃね!?うっは俺頭いい!!」
妖狐「行け!!ハウスダストの付喪神よ!」
男「ぎゃあああああ!!」
妖狐「おぬしはロリの魅力に目覚めるべきじゃとわしは思うのじゃが」
男「これはごほっ脅迫というか……てか妖狐さん強ぇじゃねぇか!!」
妖狐「わし各上じゃしな。言ったじゃろ。知名度が力となると」
男「ごほっ……なるほどごほっ」
妖狐「試しにpixivで検索をかけてみろ。わしの恐ろしさが理解できる」
男「ネットにも精通してんじゃねーかげほっ!!」
妖狐「出典は雑誌じゃがのー」
男「神主さんの娘どれだけはばひろいんだよ……そしてお前じゃなくていぬぼ……げほっげほ!」
妖狐「そういえばそんなのもあったの」
男「ググれば一番最初にげほっ!」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:36:19.14 ID:SsdJRrLU0
妖狐「そろそろ良いぞ」
ハウスダストの精「はーい」
男「……死ぬかと思った」
妖狐「全てのものに付喪神は存在するぞ。侮ってはいかんからの」
男「あれ?そういえばさっきのハウスダストの精って俺と話せるのかな?」
妖狐「試してみればよいのではないか?」
男「……むむ、はっ!」
ハウスダストの精「……ん?」
男「見えた!見えたよ妖狐さん!!」
妖狐「さっき存在を認知したところじゃからの。攻撃されたし」
男「……でもちっちゃいなぁ」
ハウスダスト「そりゃあハウスダストですからね!」
男「スマートフォンくらいしかないじゃねぇか」
ハウスダスト「これでも大きいほうなんですよ!」プンスカ
妖狐「ほう、では小さいのはどの程度じゃ?」
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:38:41.21 ID:SsdJRrLU0
ハウスダスト「肉眼では目視できません」
男「流石ハウスダスト!!」
妖狐「見事に体言しておるなぁ……」
男「このノリでほかの付喪神も見れるんじゃないだろうか」
妖狐「ハウスダストの精ってそういえばハウスダストの付喪神じゃな」
男「いいんじゃないの、細かいことは」
男「……はっ!!」
シーン
男「出ない」
妖狐「そりゃあの」
男「なんで!?」
妖狐「何の付喪神が指定してないじゃろう。そりゃ駄目じゃ」
男「なるほど……ああ!ハウスダスト消えてる!」
妖狐「エアコンの風で飛んだの」
男「流石ハウスダスト……」
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:40:37.63 ID:b8DNfQAT0
???「わっちもわっちも」
53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:43:51.42 ID:SsdJRrLU0
男「わっち派はまた違う狐だろ」
妖狐「狐関連、妖狐などは色々なメディアから出版されておるからのう」
男「そういうのも詳しいんだな……」
妖狐「ふふん、『このライトノベルがすごい!』も熟読しておる」
男「お前無敵だな……」
妖狐「もっと褒めて良いぞ。あとお前言うなと」
男「ぬーべーにも妖狐出てくるよな」
妖狐「どこかの忍者漫画も主人公が九尾じゃ」
男「主人公は九尾ではないぞ」
妖狐「構うでない。似たようなものじゃ」
男「大分違うと思うがなぁ……」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:49:55.40 ID:SsdJRrLU0
妖狐「わしからすれば微々たる違いじゃ」
男「え、じゃあ狐と犬も?」
妖狐「それは違う!!大分違うぞ!」
男「やっぱ反応するんだ……」
妖狐「そもそもわしは妖狐であって狐ではないぞ!?あんな畜生どもと一緒にするでない!」
男「畜生って言っちゃうんだね」
タマ「ニャー(それは聞き捨てなりませんな)」
男「お?タマ?」
妖狐「何じゃこのクソ生意気な猫畜生は。貴様の飼い猫か」
男「いや、近所に住んでる野良。餌を与えると懐いた」
妖狐「貴様……どうせ人間になってこの小僧をたぶらかそうって気じゃろうええ!?」
男「その展開は俺得」
タマ「ニャー(ふざけないでください!貴方のようなアバズレビッチと一緒にしないでください!私は人間になってもプラトニックな恋愛を心がけるつもりです)」
妖狐「あんじゃと貴様!?今なんつった!偉大なる妖狐に対してなんつった!?」
男「お、おい、キャラが」
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:54:42.07 ID:SsdJRrLU0
タマ「ニャァー(貴方の事ですよこのアバズレビッチ。やっぱり金髪は駄目ですね。大和撫子は黒髪ロングに限ります)」フンス
妖狐「ああ!?わしのこの美しいさらさらへあーに文句つける気かの!?その喧嘩1000両で買ってやるぞ!」
男「おい……何猫とマジ喧嘩してるんだよ。あとお前タマの言葉わかんの?」
妖狐「この畜生が悪いんじゃ!わしにたてつくから……ああ?わかるぞ?そりゃあそうじゃろ。だってわし格上じゃし」
男「格上関係ないよな。へぇ、マジか、じゃあタマの通訳してくれよ」
妖狐「はぁ?何でわしが」
男「あとで油揚げやるよ」
妖狐「仕方ないの!!今回だけじゃぞ」
男「やはりテンプレだったか」
タマ「ニャー(え!?通訳していただけるのですか!?貴方のようなアバズレビッチとは言えど、ここは感謝せねばなりません。常々から普段の御礼をと思っていた所存にございます)」
妖狐「……」イラッ
男「おお!今なんて言ったの?」
妖狐「構い方がウザイ、失せろ、だそうじゃ」
タマ「ニャッ!?」
男「ええ!?」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 00:58:44.21 ID:SsdJRrLU0
タマ「ニャー!!ニャー!!(ちょっ、何言ってるんですか!誤解を招く物言いはやめてください!)」
男「おいタマが何かをすごい訴えてるぞ」
妖狐「お前の部屋きたねぇんだよたまには掃除しろ童貞臭い、と言っておるぞ」
タマ「ニャー!」
バリィッ
妖狐「いっだああああああああ!貴様!!畜生の分際でこのワシをひっかきおったな!?許さん!二度とはむかえぬようにしてやる!」
男「おいやめろって」
妖狐「止めるな!妖怪には時として避けられぬ戦いがあるのじゃ!」
男「(猫とガチ喧嘩する妖怪初めて見た……)」
タマ「ニャー(やはり貴方とは相容れぬようですね。構いません、ここで決着をつけましょう!)」
妖狐「うおおおおおおおおおお!!」
―――数分後
妖狐「……いたっ、もう少し優しく塗らんか馬鹿もん!」
男「はいはい。じっとしてなさい」
妖狐「しみる!しみるー!!」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:01:33.53 ID:SsdJRrLU0
男「猫とガチ喧嘩して負けるって……やっぱお前本当に弱かったんだな」
妖狐「負けておらん!引き分けじゃ!」
男「まぁ俺が本気で止めに入ったからな」
妖狐「うう……うぐっ!」
男「どうした?」
妖狐「……尻が」
男「……尻?」
妖狐「み、見てくれ!」
男「はぁ!?尻をか!?」
妖狐「すごい痛いんじゃ!」
男「仕方ねぇな……」
スル……
男「(うわ……綺麗な尻……ってそこじゃねぇ、なんだこのみみずばれ)」
妖狐「ど、どうじゃ……?」
男「あ、すごくきれ……じゃなくてみみずばれになってんぞ」
60:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:03:46.15 ID:SsdJRrLU0
妖狐「ええ!?化膿止めを塗っておいてくれんか」
男「はいはい……」
ヌリュッ
妖狐「んっ」ピクッ
男「……」
ヌルル
妖狐「んんっ」ピク
男「(おさまれ俺の息子)」
妖狐「……お?なんじゃ?欲情したのか?わしはいつでもいいぞ」
タマ「ニャー(そぉい!!)」
バリィ
妖狐「ぎゃあああああああああ!!」
男「こーら、タマ、いい加減にしなさい」
タマ「ニャァ……(すみません、もう二度としません、お許しくださいご主人様……)」
妖狐「このちくしょうめぇ……」プルプル
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:08:17.52 ID:SsdJRrLU0
男「はい仲直りな」
妖狐「貴様のような畜生と握手など本来ならありえぬことじゃが今回は特別に許してやろう」
タマ「ニャア(貴方のようなアバズレビッチと本来なら手を取り合うなどありえませんが今回だけはご主人様に免じて許してあげます)」
男「お前ら喧嘩しない」
タマ「ニャッ(えっバレた!?)」
男「表情でなんとなくわかるぞ言ってること」
タマ「ニャ(ノンバーバルコミュニケーションで通じ合える仲に……!?)」キュン
妖狐「この畜生め……本当に殺してやろうか」
男「シャレになってないぞそのセリフは」
妖狐「あ、少し意味が違うんじゃ」
男「んん?」
妖狐「殺して、猫又にして、妖怪どうしで本気の戦いということじゃ」
男「ああなるほど……ホントお前らの感覚にはついていけん」
妖狐「仕方ないじゃろうわしも人間の感覚なぞわからん」
男「かなり詳しそうだけどなお前の場合」
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:11:50.28 ID:SsdJRrLU0
男「それにしても、付喪神も呼べて動物とも話せるのかぁ」
妖狐「すごいじゃろ?わし凄いじゃろ?」
男「ああ、凄いな!便利そうだ」
妖狐「おい、今わしの事ほんやくこんにゃくのような扱いしたじゃろ」
男「ソンナコトナイヨ」
妖狐「何で片言なんじゃ!?ええ!?」
男「だかしかし妖狐さんよ」
妖狐「あんじゃ」
男「その用途でいいのならお前を家に置いてやってもいいぞ」
妖狐「えっ」
男「どうする」
妖狐「通訳は嫌じゃ……バウリンガル的な扱いも嫌じゃ……」
妖狐「でも毎日お話できる……!」
男「(おお、悩んでる悩んでる)」
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:17:04.58 ID:SsdJRrLU0
妖狐「かーっ!!」
ガブッ
男「おうふ!?」
妖狐「わひはつうひゃくなぞへぬぞぉ……」ガブガブ
男「わかったから噛むのをやめて……ってか力よわっ。甘噛みじゃん」
妖狐「わ、わしは神社に戻る!だ、誰が人間なぞの通訳などしてやるか!」
男「そうか残念だな。じゃーな」
妖狐「ええっ!?」
男「ええっ!?」
妖狐「引き止めないのかの!?」
男「どうしてそういう展開になった!?」
妖狐「だ……だってほら、あれじゃぞ、毎日こう……家に帰るとわしがおかえりなさいしてやるぞ」
男「タマいるしなぁ」
タマ「ニャー(ご主人様の心のよりどころはわたしがいれば十分なのです。わかりましたか狐?)」
妖狐「……そうかの」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:19:51.65 ID:SsdJRrLU0
妖狐「じゃあ、わしは不要かの……」
スッ
ガチャッ
バタン……
男「あ、おい……」
タマ「ニャー(ご主人……)」
男「……いや、こんな展開はアレだよな」
男「流石にかわいそうなことしたか」
ガチャッ
男「おーい狐」
シン……
男「……あれ?」
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:22:16.21 ID:SsdJRrLU0
男「妖狐さん……?」
シーン……
男「本当に帰っちまったのかな」
男「……」
男「今日は暗いし、明日探しに行ってやるか……」
タマ「ニャァ……(ご主人……あなたは何も悪くありませんよ)」
男「慰めてくれるのか?はは……なんとなくわかるようになってきたわ」
タマ「ニャッ(マジですかご主人!いつか私が人になれたらその時は!)」
男「……あいつどうしてんのかね」
タマ「ニャー(……えー、あの狐の事ですか)」
男「一人で……寂しい思いでもしてんだろうか」
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:27:07.30 ID:53YolQIX0
こんな娘だろう妄想してます
74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:30:56.73 ID:SsdJRrLU0
いや俺のイメージはこんな感じかな
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:36:57.32 ID:hGzaDJ0E0
>>74
これピッタリじゃね?
最初幼女って言ってたし
69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:25:49.05 ID:SsdJRrLU0
男「……あーもう!」
タマ「ニャ?(ご主人?)」
男「気になって晩飯がまずくなる!探しに行くぞ!タマ!」
タマ「ニャー!(流石ご主人!惚れ直します!)」
―――神社
男「おーい」
タマ「ニャー(おーい狐)」
男「……いないのか?」
シン……
男「いない……のか」
タマ「ニャー(いなくなっちゃったんでしょうかねぇ……)」
男「と、普通のノベルならそう展開するんだろうが」
タマ「ニャ?」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:28:48.36 ID:SsdJRrLU0
男「そうら油揚げだとってこーい!!」ブゥン!
妖狐「はぐむーっ!!」パクッ!
タマ「ニャッ!?(えええ!?)」
男「やはりな」
妖狐「ひ、卑怯じゃぞ!!もので釣るなぞ」モグモグ
男「うるせぇ、お前にはまだ色々話すことがあるんだよ。わっちは狐じゃなくて狼だとかな」
妖狐「それはおぬしのミスじゃろ……」
男「否定はしない。……ん?」
妖狐「な、なんじゃ」
男「おま……もしかして泣いてた?」
妖狐「行け花粉!!」
男「ぎゃああああああああ!!」
タマ「ニャー!!(ご主人ーーー!!)」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:36:37.34 ID:SsdJRrLU0
妖狐「貴様もわしがいなくなってさびしかったのじゃろう……目が真っ赤じゃぞ」
男「お前の花粉のせいだな。間違いなくな」
タマ「ニャー(ご主人ご無事で?)」
妖狐「……まぁその、なんだ」
男「ん?」
妖狐「どうしてもというのであれば、おぬしの家に住んでやっても良いぞ?んん?」
男「じゃあいいや」
妖狐「ええっ!?」ガーン
男「嘘だよ」
ナデナデ
妖狐「あ……」
男「こんなガキ泣かせるなんざ、いい大人のすることじゃねーよな」
妖狐「……わ、わしは2000歳じゃぞ!」
男「そうかそうか。奇遇だな。俺は年上が好みなんだよ」
終わり?
78:◆ZWAJnJ4q9E :2012/08/27(月) 01:37:13.79 ID:SsdJRrLU0
問い1:この手の作品を書くたびに思うのですが、どこで終わらせればよいのでしょうか?終わらせどころか見つかりません
81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:38:59.37 ID:bOsCPIC30
取り敢えず終わりでいいから後日談はよ
85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:45:22.28 ID:SsdJRrLU0
――――その後。
男「すっかり居ついちまったな」
妖狐「はん。もう前の家の事などとうの昔の話じゃ」
男「おいそれでもお前お社さまかよ」
妖狐「実際にいようがいまいがわからんのじゃから仕方ないじゃろうて」
男「おいおい……そんな事言って、神社が潰れたらどうするんだ?」
妖狐「そ、それは困る!わしの存在がおぼろげになってしまう!」
男「ちょっと見に行くか……もともとボロい神社だったし、不安だ」
妖狐「そうじゃの……」
タマ「ニャー(行ってらっしゃいませご主人様ー。留守はわたくしめにお任せ下さい)」
88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 01:51:45.96 ID:SsdJRrLU0
ザワザワ……
男「ん?」
妖狐「お?」
「例の神社なう、と……」
「いやー今日も暑いですね」 「おみくじ引いて帰ろう」
「本当にここに?」 「おお、ここが噂の」
「お守り買えば効果があるのかな」 「この日のために一眼レフを」
「俺だー!結婚してくれ!!」
「ここは効果がありそうな神社だ……」
男「……は?」
妖狐「ど、どういうことじゃ……?」
神主「おや?貴方は近所に住んでる……いつもお世話になっております」
男「いえ、俺何もしてませんが……」
神主「いえいえ。有名な退魔師の家系の方だと聞いていますよ。
この町に悪い事が起きないのも、貴方のおかげです」
男「それはいいすぎです」
妖狐「テリーのワンダーランドじゃの」
91:ヒャッハー!狐っ娘画像だぁー!:2012/08/27(月) 01:56:50.74 ID:SsdJRrLU0
男「しかし、どうしてこんなに人が……?
失礼ですが、この前まではもっとこう……さびれていたというか」
神主「はっはっは!寂れていたのは本当ですし、気を使っていただかなくてもかまいませんよ!」
男「それにしても……何が起こってるんです?」
妖狐「なんか最近妖力が充実しとると思ったら……」
神主「いやですね」
男「はい」
神主「最近ここで『すごく可愛らしい狐っ娘を見た』という噂が立ちまして」
男「は」
妖狐「え」
神主「確かにここの神様は狐様です。それで偶然ではないだろうという話や、目撃証言が二人も出てきたことから噂は広まり」
神主「ついには周辺の町から狐様を見たいがためだけに人がくるようになったんです」
神主「いやぁ、狐様様様ですね!」
男「……」ダラダラ
妖狐「……」ダラダラ
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:00:24.29 ID:SsdJRrLU0
男「どういうことだよこれは……(小声)」
妖狐「……言ったじゃろう、波長があるとな。ここはわしに適応した空間じゃ、偶然目撃者がいてもおかしくない。さらに」
男「さらに?」
妖狐「わしとおぬし、よくしゃべっているじゃろう……?そのせいか、人に気付かれやすくなっているようじゃ」
男「はぁっ!?」
神主「どうか?」
男「いえ!?べっつに!?」
妖狐「まぁここに人が増えるのはいいことじゃ。うーむ……最近確かに寝ざめが良いと思うたわ」
男「……いいのかよ、お前の存在バレかけてんぞ(小声)」
妖狐「むしろ大体的にバレれば、話し相手に困らんのう」
男「そうすればうちから出ていくのか」
妖狐「それが嫌じゃから、大々的にバレることはなさそうじゃの」
男「可愛い奴め」
神主「あの」
男「はっはい!?」
100:>>96 まぁまぁ:2012/08/27(月) 02:05:20.00 ID:SsdJRrLU0
神主「そこにいるのはもしかして……うちのお社さまですか?」
男「おほおっ!?」
妖狐「み、見えるのか!?」
男「見えるんですか!?」
神主「いえ、何も見えませんし、何も聞こえませんよ。ただ……」
男「ただ……?」
神主「なんというかこう、波長のようなものを感じるんです。今までここを切り盛りしてくれていた、大切な神様の」
妖狐「神様じゃなくてすまぬのう」
男「……えーとですね」
神主「はい」
男「こんなこと言うとおかしいと思われるかもしれませんが」
神主「はい」
男「実はその通りです」
妖狐「おおっ!?」
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:08:49.51 ID:SsdJRrLU0
神主「やはりですか……それで、他の人に姿をお見せになることは?」
男「いや、見せたい見せたくないじゃなく、『見せられない』そうです。特殊な家系でもない限り……」
神主「そうですか……見た目は?」
男「身長140cm程度の美少女の狐っ娘です」
妖狐「わしは可愛いぞ!」フンス
男「一人称は『わし』です」
神主「……そうですか、似顔絵を書いていただけますか?」
男「え?あまり絵は得意じゃないんですけど……」
神主「じゃあ特徴だけでもいいんです!なんというか詳細に!」
男「え?ああ、はい……」
神主「できれば好きな食べ物などのプロフィールも詳細にお願いします!!」
男「あ、はい……」
神主「謝礼はお支払いします!!」
男「マジですか!?」
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:11:48.35 ID:SsdJRrLU0
――――さらに後日
ガイド「こちらが有名な、『おきつね大社』です。身長140cm程度のかわいらしいお狐様がお社様だそうですね」
「なんだって……」
「はかどるな」
「これはお守りを買わないと」
「俺はお土産を買わないと!!」
男「……(なんだかんだあって、あの神社は観光スポットになってしまった)」
妖狐「わしとしては、賽銭とお供え物が増えて、嬉しい限りじゃ~」
男「(さらに)」
神主「すみません、これ本日の分です」
ドサ
男「あ、はい。ありがとうございます」
妖狐「なんじゃこの量……正気の沙汰ではないぞ」
108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:16:00.64 ID:SsdJRrLU0
男「(何故か、『お狐さまの質問コーナー』というものが発足し)」
男「(うちの妖狐は、毎日それに答えるというアルバイトをしているおかげで、ごくつぶしではなくなった)」
妖狐「……『結婚してください』じゃと?おぬしが出家して修行僧になったらかんがえてやらんでもない」
男「出家して修行僧になれ、と……」カタカタ
妖狐「『恋がうまくいくにはどうしたらいいですか?』じゃと?んなもん当たって砕けてからもういっぺん言いに来い」
男「当たって砕けてからもう一遍言いに来い、と……」
妖狐「おい小僧!これあと何枚あるんじゃ!?」
男「今日の分だけであと66」
妖狐「多すぎないかのっ!?」
タマ「ニャー(おお、熱心なこと)」
111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:21:39.37 ID:SsdJRrLU0
男「『最近うちの犬がよく吠えるんです、発情期でしょうか?』」
妖狐「畜生の事情など知るか!」
男「『うちの作物の調子がよくありません、なんとかしてもらえますか?』」
妖狐「知らん!わしじゃなくて土地神に聞け!」
男「『漫画にしても構いませんか?』」
妖狐「うむかまわんぞ!可愛く描けよ!」
男「『どうして僕の家には美少女が降ってこないのでしょうか?』」
妖狐「美少女が降ってくるような日頃の行いをしてみろ」
男「『レタスとキャベツの違いってなんですか?』」
妖狐「名前に決まってるじゃろ!」
妖狐「まだあるのかの!?」
男「これで最後だ、『大切な人とずっと一緒にいたいです、どうしたらいいですか?』」
妖狐「……」
男「どうした」
妖狐「無理やり家に転がり込んでやれ!そうすればお前のものじゃ!」
終わりッ!!
113:忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/08/27(月) 02:23:20.52 ID:yGnAR9gp0
>>111
最後の行みえねえ
129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:39:08.59 ID:Lxq007HQ0
まだは巫女服黒髪ストレートの神主の娘(ロリ)も猫又(ロリ)も登場してないよ?(´・ω・`)
130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/08/27(月) 02:39:12.53 ID:bOsCPIC30
>>1乙!よく頑張った!次回に期待する!
男「年上なのは認めるがなぁ……」
妖狐「なんじゃその腑に落ちないような表情は」
男「もっとこうスタイルが」
妖狐「……だっれがつるぺたじゃ!その口を引き裂いてやろうか!?」
男「まだ何も言ってない!」
妖狐「ええか!?わしだって数百年も前はもっとボンキュッボンだったんじゃ!」
男「え?なんでじゃあ幼女になっちゃったの?」
妖狐「幼女言うな!せめて少女と言わぬか!」
男「じゃあなんで少女になっちゃったの?」
妖狐「それには海よりも深く山よりも高い理由があるのじゃ」
男「話すと長くなる?」
妖狐「そうじゃのう、まずは大仏建造の話から」
男「すみません一行でお願いします」
妖狐「妖力が減ったんじゃ」
妖狐「人間の姿が仮の姿であることはおぬしも知っておるであろう?」
男「ええまぁ」
妖狐「だがわしらの場合、狐の姿が本物というわけでもないんじゃ」
男「えっ?」
妖狐「なんというかあやかしとは半端なものでの、基本的には仮の姿でしかおられんのじゃ」
男「どういうこと?」
妖狐「まぁおぬしのようなうつけにもわかるように説明すると、『見る人間のイメージに左右される』ということかのう」
男「ああなるほど……だからオタクな俺にはなんというかアニメちっくな少女に」
妖狐「うむ。狐にトラウマがある人間なら恐ろしい化け物の姿に見えるぞ」
男「じゃあ実際はどんなんなの?」
妖狐「わしに聞くな。わしは鏡ができてからしか自分の姿を知らんし、近くにいる人間によってちまちま変わってきた。実際の姿なぞ持っておらん。ただ」
男「ただ?」
妖狐「正直この姿に慣れ親しみすぎてもう他の姿を忘れてしまった」
妖狐「もとよりわし、姿とかそこまで気にしておらんしのう。貴様みたいなのがいなければ」
男「なんでだよ」
妖狐「ボンキュッボンがどうとかうるさかったのは2000年の歴史をひも解いても貴様だけじゃ。他の者はわしにひれ伏し、教えを乞うたものじゃ」
男「そんなすごいの?」
妖狐「当たり前じゃろ!?創世記からおるんじゃぞ!?色々できるんじゃぞ!」
男「例えば何ができんの?」
妖狐「地脈を操り火山を噴火くらいなら今でもできるのう」
男「……ヤベェ」
妖狐「昔は雨を降らすこともできたぞ。干ばつから洪水まで思いのままじゃ」
男「ヤベェ!!」
妖狐「どうじゃ?尊敬したか?」
男「尊敬しました」
妖狐「そうじゃろうそうじゃろう!なんか献上しろ!」
男「はいじゃがりこ」
男「昔はまずかったの?」
妖狐「カカオ70%とかあるじゃろ」
男「あるね」
妖狐「あれを100倍苦くしたのがチョコレートとか言われておった」
男「マジかよ」
妖狐「砂糖を入れてなかったからの。というか昔は砂糖は超高級品じゃ」
男「ええ!?」
妖狐「甘味料ではなく、薬用として使われておったなぁ。しかも、一部の上流階級だけじゃぞ」
男「すげぇな砂糖」
妖狐「調味料なんてだいたいそんなもんじゃぞ。今は良い時代じゃ」
男「まぁ日本に限ったことかもしんないけどな」
妖狐「わしはこの辺り以外良く知らんからのう。そのあたりは他の奴らに聞いてくれ」
男「他の奴らって?」
妖狐「知らんか?ラファエルとかおらんかったか?」
妖狐「違いがようわからんのだが」
男「天使は神からの使いで、お前らはえーと……なんだ?」
妖狐「概念であるわしらに明確な存在なぞないぞ」
男「わ、わかりづらっ!」
妖狐「そして小僧、何を勘違いしておるかしらんが、神や天使やなんやらと分けようと、結局は同じじゃぞ」
男「えっ」
妖狐「わしらは存在としての存在ではないからの。概念上にのみ存在する。いわば空想の産物……ちと小僧には難しいか」
男「さ、さすがにわからん……」
妖狐「幽霊の正体見たり枯れ尾花、というじゃろう?わしらはおぬしらに存在を定義されて初めて明確な存在となるのじゃ」
男「でも人間は神様が作ったとか言ってたよな」
妖狐「たとえばの話じゃ」
男「ん?」
妖狐「何もない所を指して、『ここに人がいる』と言ったらどうなると思う?」
男「頭おかしいって言われるんじゃね?」
男「え?」
妖狐「そこには人は存在しない。しかし全員が『存在する』と言えば、それは存在するのとは同じではないかの?」
男「ま、まぁ……」
妖狐「まぁそういう感じだと思ってくれれば良いの。だから有名な妖怪なんかは強く表現され、無名な妖怪は弱いとか言われるんじゃ」
男「確かに、漫画とかでも有名な奴は強いよな。サタン様とか」
妖狐「あいつは確かに協力じゃのう。馬鹿じゃが」
男「えっ」
妖狐「会えばわかるぞ」
男「会いたくはないけど、ちょっと会ってみたくなる」
妖狐「まぁ普通の人間が会うと死ぬかもしれんしな」
男「前言撤回絶対会わねぇ」
妖狐「まぁ地獄の奥底に行く用事がなければ会うことはないの」
男「よかった」
妖狐「そうじゃの、行くか」
男「お前ん家ここじゃなかったの」
妖狐「依り代の事か?確かにここじゃな」
男「うごけんの?」
妖狐「わしを地縛霊どもと一緒にするでない」
男「そんなこと言うと地縛霊怒るぞ」
妖狐「そんな時はわしのあやかしスラッシャーでスパーンじゃ」
男「(なにそれちょっとかっこいい)」
妖狐「ほれいくぞ小僧、お前の家はどっちじゃ」
男「え、俺ん家くるの」
妖狐「おぬしは自分の家に帰らん気か?……はっもしや女の家に寝泊まりしているというのか!?このヒモ!」
男「ヒモじゃねーし寝泊まりもしてない。どこでそんな言葉覚えてくるんだよ……」
妖狐「ananじゃ」
男「本当最近の事に詳しいなお前!!」
妖狐「もちろんかまわんの」
男「じゃあなんで来るんだよ」
妖狐「もっとお話ししたいんじゃ!見りゃわかるじゃろう!?」
男「わかんねーよ!てか素直で可愛いな!」
妖狐「もっと褒めろ!」フンス
男「そういう態度の子には褒めません。てかなんでそんな話したいんだよ。あれか?おばあちゃんだからか?」
妖狐「おばあちゃんというな妙齢の女性と言え」
男「ちょっといい言い方にしようとしてんじゃねーよ」
妖狐「おぬし次いつくるかわからんのじゃもん……」
男「まぁ今日来たのも気まぐれですし」
妖狐「じゃろ。じゃあ連れてけ」
男「えー、年上のボンキュッボンのお姉さんがいいー」
妖狐「というかボンキュッボンって古いのう」
男「お前に言われたくねぇ!!」
妖狐「は?」
男「は?って」
妖狐「お前、わしが見えるんじゃろ?」
男「当たり前じゃん」
妖狐「わしと話せるんじゃろ?」
男「当たり前じゃん」
妖狐「正直、もう何年振りかわからん」
男「えっ」
妖狐「行ったじゃろ?わしらは『概念』であって『存在』ではない」
妖狐「認めてもらえば存在できる。気付けてもらえば存在できる」
妖狐「しかし最近の、こんなに科学の進んだ日本で、わしの存在を認めようとする奴などおるかの?」
男「そりゃ……いるんじゃないの」
妖狐「心からじゃ」
男「心から、ねぇ……」
妖狐「そう思っておる人間がどれだけいるか、ということじゃ」
男「……ほとんどいないだろうな」
妖狐「そりゃそうじゃの。わしらは所詮ファンタジー。おぬしらには理解できぬ存在よ」
男「まぁここにこうやっているんだけどな」
妖狐「そんなセリフを吐けるのも、おぬしが特別じゃからじゃろう?」
男「別に特別でもなんでもねーよ」
妖狐「臭いを嗅げばわかる。おぬしは退魔師、そうじゃろう?」
男「ニアミスってとこかな」
妖狐「ほう、その心は」
男「俺のご先祖様は、退魔師とかそんなんだったらしいよ」
妖狐「由緒正しい家系じゃな」
男「でも数百年も前になくなってる。親父は今、不動産やってるよ」
妖狐「悪くない選択じゃな」
男「流石にわかるのか」
男「ぶっちゃけそうです。ごめんなさい」
妖狐「ついでに、いわくつきの家を祓って売っておるじゃろ」
男「その通りです。てかよく御存じで」
妖狐「力は弱かろうと、退魔師の家系。そのくらいはできるじゃろう?わしだって同じようなもんじゃしな」
男「腐っても妖狐ってか」
妖狐「腐ってはおらんぞ」
男「みりゃわかる」
妖狐「ぴっちぴちじゃ!」
男「……確かに」
妖狐「今、ちょっとときめいたじゃろ」
男「ときめいてはない」
妖狐「では欲情かの?」
男「否定しきれないのが悲しいとこだな」
妖狐「ふふふ、いいぞ?おぬしなら」
妖狐「据え膳も食えぬのか?このヘタレめ」
男「それはもうちょっと仲良くなってからじゃないですかね」
妖狐「ああ、そういうものじゃったか?すまぬ、わしには時間の感覚というものがよくわからん」
男「まぁ2000年も生きてりゃなぁ……」
妖狐「数百年程度のことなら、ついこの間のように覚えておる。そうかと思えば、随分長い事誰とも話してないような気さえする。十年ほど前に一度、人と話したはずなんじゃがの」
男「それは俺にはよくわからんな」
妖狐「わかる日が来るとは思えん。わかってもらおうとおも思わん。それがわしらとお前らの違いじゃ」
男「そういえばさ、ちょっと酷い質問かもしれないけど」
妖狐「なんじゃ?わしらはそういう事で傷ついたりせんから、なんでも聞いてよいぞ」
男「仲良くなった人間が死ぬのって、どういう気分?」
妖狐「どうもこうもないじゃろう。死んだ後、いなくなってしまうのはつらいが」
男「……あと?」
妖狐「幽霊になればむしろわしら側じゃしの」
妖狐「仲の良かった元人間が成仏してしまったときは、なんとも言えない虚無感に襲われる。人間もいつか成仏するものじゃしな……」
男「死ぬのは気にしないんだな」
妖狐「死の概念がないわしらからすればよくわからん。体を失うだけじゃろ」
男「さすが妖怪言う事が違う」
妖狐「存在そのものを失ってしまうことに比べれば安いものじゃて。おぬしも死んでみるか?」
男「それはちょっと、もう少し時間をおいてからかな」
妖狐「そうじゃな。わしへの献上品がなくなっては困る」
男「別にお前に何か献上しようなんて思ってないぞ」
妖狐「えっ……」シュン……
男「……(クソッ!!耳をたらすな!!可愛いだろうが!!)」
男「……ま、まぁたまには何か差し入れてやってもいいかな」
妖狐「わーい!わしおぬし大好きじゃ!」
男「軽いな本当!」
妖狐「こらこら溜息をつくでない、幸せが逃げるぞ」
男「そんな迷信……」
幸せ「お世話になりました」
男「って本当に逃げてる!!待って!!」
妖狐「そりゃわしと一緒じゃからな。迷信も本当になるぞ」
男「えええ!?」
妖狐「おぬしの霊力が法力か妖力か知らんが、どうやらわしのせいで活性化してるみたいじゃしの」
男「なにそれ!?」
妖狐「連鎖反応という奴じゃ。ホラー映画を見た後壁のシミが幽霊に見えるのと似たようなものと考えればよい」
男「それとこれとは話が違うような……」
妖狐「だから似たようなものと言っておるじゃろう。ほら早くせんといなくなるぞ」
幸せ「今までありがとうございました」
男「ま、待ってーーー!!」
男「体育の成績は悪くないからな……」
幸せ「今後ともよろしくお願いします」
男「しかしこんなことが次々起こるのか……困るな」
妖狐「しょせん迷信は迷信じゃぞ。本気で否定してやれば消滅する」
男「へえ、そんなもんなのか」
妖狐「たとえば口笛を吹いて蛇を呼ぶじゃろ?その後『こんな都会に蛇がいるか!!』って本気で思ってやれば消滅するぞ」
男「ここ田舎だからできねぇわそれ」
妖狐「じゃあ諦めて噛まれようぞ」
男「それは嫌」
男「しまった、着いてしまった……」
妖狐「これから世話になるぞ」
男「住む気!?」
妖狐「え?うん」
男「そこだけ年相応にしてんじゃねぇよ!!」
妖狐「なら他にわしと話せるものを見つけて見せろ!」
男「それは屏風の虎をだす感じだよ妖狐さん」
妖狐「妖怪バトルファンタジーとかならここでたくさんでてくるんじゃがのう」
男「残念ながら俺に戦闘能力はない」
妖狐「ほう、ためしてみるかの?」スッ
男「やめてくれ、ボコられる未来しか見えない」
妖狐「まぁスッとかやったが、わしも基本的には見た目程度の戦闘力しかないがの」
男「妖狐なのに!?」
妖狐「しょせんは狐じゃ。噛んだりひっかいたりはできるがの」
妖狐「ここから100km先の火山とか噴火させておぬしにダメージが与えられるのかの」
男「ええ?意外としょぼいんだな」
妖狐「……」イラッ
ザワッ
ゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾ!!
男「!?」
男「で、できるんじゃねーか!?な、なにしてんだ!?」
妖狐「くくく……しょぼとかのたまいおった罰じゃ」
男「一体何が……くしょん!?」
妖狐「苦しめ苦しめ」
男「おまっ、なにしっくしょん!へっぶし!」
妖狐「付近の森を活性化させて花粉を放ち、風を呼んだ」
男「おまえけっこうすごっくしょん!ぶし!へっち!」
妖狐「すごかろうすごかろう」
妖狐「え?無理じゃけど?」
男「てめぇ後で殺す!!っくしょん!!」
男「家に入ってなんとか収まった……」
妖狐「よくよく考えれば家の前で何してたんじゃろうなわしら」
男「なんとかお前を追い返せないかと画策してたんだけどな」
妖狐「おぬし意外とひどいの」
男「お前が巨乳なら話は違ったんだけど」
妖狐「貴様、噛むぞ」
男「(なんか噛まれても痛くなさそうということは黙っておこう)」
妖狐「そういえばおぬしは理解しておるとは思うが」
男「ん?」
妖狐「今回のすべての言動、周りから見ればおぬしの独り言じゃぞ」
男「っべぇえええ忘れてたぁあぁぁ!!」
妖狐「明日からちょっと可哀想な人を見る目で見られるの」
男「学校行きたくない」
妖狐「夏休みじゃろうて?」
妖狐「ああ……夏休みまえはあんなに親しげだった友人たちが、何故か夏休み明けに『お、おはよう……』と若干目を合わせてくれないという」
男「かなりリアルに再現すんな!?」
妖狐「さらに仲のいい女友達だったはずのあの子が別の男友達とやけに仲が良くて『あれ……いつの間に?』という展開かの」
男「やめろ!!夏休み後あるあるを言うんじゃねぇ!だからどっからひっさげてくるんだその知識は!」
妖狐「雑誌の投稿欄じゃ」
男「まぁそこだよね。ってかお前らネットは使わないんだな」
妖狐「ネットか……うーむ、あまり得意ではないのう。勝手に人の家に入って触るのも躊躇われるし……」
男「じゃあどうやって雑誌読んでんだよ……」
妖狐「神主のとこの娘の雑誌じゃ」
男「ああ、納得……」
同志よ・・・!
男「え?なんの話?」
妖狐「こっちの話じゃ」
男「お前ってなんとなく知識が偏ってそうなイメージだよな」
妖狐「失礼な。あとお前とはなんじゃお前とは」
男「え、お前駄目?」
妖狐「せめて、第八土地順守霊神九尾のあやかし狐様じゃろ」
男「長い!!」
妖狐「じゃあ妖狐さんでいいぞ」
男「最初からそれに許可をだしてくれ。あとお前土地神の系譜なの?」
妖狐「だからお前言うなと。あとさっきのは適当じゃて」
男「適当かよ!」
妖狐「わしもなんかかっこいい名前欲しかったんじゃ!」
男「気持ちはわかるけど!」
妖狐「ん?興味でもあるのか?」
男「いやサタンとかは絶対会いたくないけど、そういうレアなのって何か会いたくない?」
妖狐「ぶっちゃけ言うとのう」
男「微妙に若者だな」
妖狐「おぬしら、会ってても気づいてないが大半じゃぞ」
男「ええ!?」
妖狐「波長とかそういうのも関係してるんじゃと。おぬしは退魔師だから妖との相性がいいんじゃ。逆に天使と呼ばれる輩どもは信仰心の強い物の前に現れるとか」
男「ああ、なるほど……」
妖狐「ヨーロッパ圏では天使の目撃情報とかもあるじゃろ?」
男「まぁガセっぽいけど」
妖狐「それでも、火の無い所に煙はたたぬ。信仰心のたまものじゃて」
男「若干の意味の違いはあるがな」
妖狐「だから、おぬしにも会えるものと会えないものがおる」
男「なるほどなぁ。ちょっとさびしいな」
男「誰?」
妖狐「付喪神じゃ」
男「あー……ぽい」
妖狐「本当はおぬしらにすごいアピールしてるんじゃけどな。気付いてもらえとらん」
男「なんか切ない」
妖狐「仕方ない。ある種、住む世界が違うんじゃ。いつも使ってるものを大事にしてやれ。たまには手入れしてやれ。そのうちいいことが起こるぞ」
男「靴とかも磨いてみるかなぁ」
妖狐「そうしてみろ。一番身近な神なのじゃからな。大切に扱えよ」
男「うーむ。なんとなく説得力あるなぁ」
妖狐「じゃろ!?わし凄いじゃろ!?」
男「無い胸を張られてもなぁ」
妖狐「しばくぞ小僧」
妖狐「どうした?」
男「ボンキュッボンの妖怪を探しにいけばいいんじゃね!?うっは俺頭いい!!」
妖狐「行け!!ハウスダストの付喪神よ!」
男「ぎゃあああああ!!」
妖狐「おぬしはロリの魅力に目覚めるべきじゃとわしは思うのじゃが」
男「これはごほっ脅迫というか……てか妖狐さん強ぇじゃねぇか!!」
妖狐「わし各上じゃしな。言ったじゃろ。知名度が力となると」
男「ごほっ……なるほどごほっ」
妖狐「試しにpixivで検索をかけてみろ。わしの恐ろしさが理解できる」
男「ネットにも精通してんじゃねーかげほっ!!」
妖狐「出典は雑誌じゃがのー」
男「神主さんの娘どれだけはばひろいんだよ……そしてお前じゃなくていぬぼ……げほっげほ!」
妖狐「そういえばそんなのもあったの」
男「ググれば一番最初にげほっ!」
ハウスダストの精「はーい」
男「……死ぬかと思った」
妖狐「全てのものに付喪神は存在するぞ。侮ってはいかんからの」
男「あれ?そういえばさっきのハウスダストの精って俺と話せるのかな?」
妖狐「試してみればよいのではないか?」
男「……むむ、はっ!」
ハウスダストの精「……ん?」
男「見えた!見えたよ妖狐さん!!」
妖狐「さっき存在を認知したところじゃからの。攻撃されたし」
男「……でもちっちゃいなぁ」
ハウスダスト「そりゃあハウスダストですからね!」
男「スマートフォンくらいしかないじゃねぇか」
ハウスダスト「これでも大きいほうなんですよ!」プンスカ
妖狐「ほう、では小さいのはどの程度じゃ?」
男「流石ハウスダスト!!」
妖狐「見事に体言しておるなぁ……」
男「このノリでほかの付喪神も見れるんじゃないだろうか」
妖狐「ハウスダストの精ってそういえばハウスダストの付喪神じゃな」
男「いいんじゃないの、細かいことは」
男「……はっ!!」
シーン
男「出ない」
妖狐「そりゃあの」
男「なんで!?」
妖狐「何の付喪神が指定してないじゃろう。そりゃ駄目じゃ」
男「なるほど……ああ!ハウスダスト消えてる!」
妖狐「エアコンの風で飛んだの」
男「流石ハウスダスト……」
妖狐「狐関連、妖狐などは色々なメディアから出版されておるからのう」
男「そういうのも詳しいんだな……」
妖狐「ふふん、『このライトノベルがすごい!』も熟読しておる」
男「お前無敵だな……」
妖狐「もっと褒めて良いぞ。あとお前言うなと」
男「ぬーべーにも妖狐出てくるよな」
妖狐「どこかの忍者漫画も主人公が九尾じゃ」
男「主人公は九尾ではないぞ」
妖狐「構うでない。似たようなものじゃ」
男「大分違うと思うがなぁ……」
男「え、じゃあ狐と犬も?」
妖狐「それは違う!!大分違うぞ!」
男「やっぱ反応するんだ……」
妖狐「そもそもわしは妖狐であって狐ではないぞ!?あんな畜生どもと一緒にするでない!」
男「畜生って言っちゃうんだね」
タマ「ニャー(それは聞き捨てなりませんな)」
男「お?タマ?」
妖狐「何じゃこのクソ生意気な猫畜生は。貴様の飼い猫か」
男「いや、近所に住んでる野良。餌を与えると懐いた」
妖狐「貴様……どうせ人間になってこの小僧をたぶらかそうって気じゃろうええ!?」
男「その展開は俺得」
タマ「ニャー(ふざけないでください!貴方のようなアバズレビッチと一緒にしないでください!私は人間になってもプラトニックな恋愛を心がけるつもりです)」
妖狐「あんじゃと貴様!?今なんつった!偉大なる妖狐に対してなんつった!?」
男「お、おい、キャラが」
妖狐「ああ!?わしのこの美しいさらさらへあーに文句つける気かの!?その喧嘩1000両で買ってやるぞ!」
男「おい……何猫とマジ喧嘩してるんだよ。あとお前タマの言葉わかんの?」
妖狐「この畜生が悪いんじゃ!わしにたてつくから……ああ?わかるぞ?そりゃあそうじゃろ。だってわし格上じゃし」
男「格上関係ないよな。へぇ、マジか、じゃあタマの通訳してくれよ」
妖狐「はぁ?何でわしが」
男「あとで油揚げやるよ」
妖狐「仕方ないの!!今回だけじゃぞ」
男「やはりテンプレだったか」
タマ「ニャー(え!?通訳していただけるのですか!?貴方のようなアバズレビッチとは言えど、ここは感謝せねばなりません。常々から普段の御礼をと思っていた所存にございます)」
妖狐「……」イラッ
男「おお!今なんて言ったの?」
妖狐「構い方がウザイ、失せろ、だそうじゃ」
タマ「ニャッ!?」
男「ええ!?」
男「おいタマが何かをすごい訴えてるぞ」
妖狐「お前の部屋きたねぇんだよたまには掃除しろ童貞臭い、と言っておるぞ」
タマ「ニャー!」
バリィッ
妖狐「いっだああああああああ!貴様!!畜生の分際でこのワシをひっかきおったな!?許さん!二度とはむかえぬようにしてやる!」
男「おいやめろって」
妖狐「止めるな!妖怪には時として避けられぬ戦いがあるのじゃ!」
男「(猫とガチ喧嘩する妖怪初めて見た……)」
タマ「ニャー(やはり貴方とは相容れぬようですね。構いません、ここで決着をつけましょう!)」
妖狐「うおおおおおおおおおお!!」
―――数分後
妖狐「……いたっ、もう少し優しく塗らんか馬鹿もん!」
男「はいはい。じっとしてなさい」
妖狐「しみる!しみるー!!」
妖狐「負けておらん!引き分けじゃ!」
男「まぁ俺が本気で止めに入ったからな」
妖狐「うう……うぐっ!」
男「どうした?」
妖狐「……尻が」
男「……尻?」
妖狐「み、見てくれ!」
男「はぁ!?尻をか!?」
妖狐「すごい痛いんじゃ!」
男「仕方ねぇな……」
スル……
男「(うわ……綺麗な尻……ってそこじゃねぇ、なんだこのみみずばれ)」
妖狐「ど、どうじゃ……?」
男「あ、すごくきれ……じゃなくてみみずばれになってんぞ」
男「はいはい……」
ヌリュッ
妖狐「んっ」ピクッ
男「……」
ヌルル
妖狐「んんっ」ピク
男「(おさまれ俺の息子)」
妖狐「……お?なんじゃ?欲情したのか?わしはいつでもいいぞ」
タマ「ニャー(そぉい!!)」
バリィ
妖狐「ぎゃあああああああああ!!」
男「こーら、タマ、いい加減にしなさい」
タマ「ニャァ……(すみません、もう二度としません、お許しくださいご主人様……)」
妖狐「このちくしょうめぇ……」プルプル
妖狐「貴様のような畜生と握手など本来ならありえぬことじゃが今回は特別に許してやろう」
タマ「ニャア(貴方のようなアバズレビッチと本来なら手を取り合うなどありえませんが今回だけはご主人様に免じて許してあげます)」
男「お前ら喧嘩しない」
タマ「ニャッ(えっバレた!?)」
男「表情でなんとなくわかるぞ言ってること」
タマ「ニャ(ノンバーバルコミュニケーションで通じ合える仲に……!?)」キュン
妖狐「この畜生め……本当に殺してやろうか」
男「シャレになってないぞそのセリフは」
妖狐「あ、少し意味が違うんじゃ」
男「んん?」
妖狐「殺して、猫又にして、妖怪どうしで本気の戦いということじゃ」
男「ああなるほど……ホントお前らの感覚にはついていけん」
妖狐「仕方ないじゃろうわしも人間の感覚なぞわからん」
男「かなり詳しそうだけどなお前の場合」
妖狐「すごいじゃろ?わし凄いじゃろ?」
男「ああ、凄いな!便利そうだ」
妖狐「おい、今わしの事ほんやくこんにゃくのような扱いしたじゃろ」
男「ソンナコトナイヨ」
妖狐「何で片言なんじゃ!?ええ!?」
男「だかしかし妖狐さんよ」
妖狐「あんじゃ」
男「その用途でいいのならお前を家に置いてやってもいいぞ」
妖狐「えっ」
男「どうする」
妖狐「通訳は嫌じゃ……バウリンガル的な扱いも嫌じゃ……」
妖狐「でも毎日お話できる……!」
男「(おお、悩んでる悩んでる)」
ガブッ
男「おうふ!?」
妖狐「わひはつうひゃくなぞへぬぞぉ……」ガブガブ
男「わかったから噛むのをやめて……ってか力よわっ。甘噛みじゃん」
妖狐「わ、わしは神社に戻る!だ、誰が人間なぞの通訳などしてやるか!」
男「そうか残念だな。じゃーな」
妖狐「ええっ!?」
男「ええっ!?」
妖狐「引き止めないのかの!?」
男「どうしてそういう展開になった!?」
妖狐「だ……だってほら、あれじゃぞ、毎日こう……家に帰るとわしがおかえりなさいしてやるぞ」
男「タマいるしなぁ」
タマ「ニャー(ご主人様の心のよりどころはわたしがいれば十分なのです。わかりましたか狐?)」
妖狐「……そうかの」
スッ
ガチャッ
バタン……
男「あ、おい……」
タマ「ニャー(ご主人……)」
男「……いや、こんな展開はアレだよな」
男「流石にかわいそうなことしたか」
ガチャッ
男「おーい狐」
シン……
男「……あれ?」
シーン……
男「本当に帰っちまったのかな」
男「……」
男「今日は暗いし、明日探しに行ってやるか……」
タマ「ニャァ……(ご主人……あなたは何も悪くありませんよ)」
男「慰めてくれるのか?はは……なんとなくわかるようになってきたわ」
タマ「ニャッ(マジですかご主人!いつか私が人になれたらその時は!)」
男「……あいつどうしてんのかね」
タマ「ニャー(……えー、あの狐の事ですか)」
男「一人で……寂しい思いでもしてんだろうか」
これピッタリじゃね?
最初幼女って言ってたし
タマ「ニャ?(ご主人?)」
男「気になって晩飯がまずくなる!探しに行くぞ!タマ!」
タマ「ニャー!(流石ご主人!惚れ直します!)」
―――神社
男「おーい」
タマ「ニャー(おーい狐)」
男「……いないのか?」
シン……
男「いない……のか」
タマ「ニャー(いなくなっちゃったんでしょうかねぇ……)」
男「と、普通のノベルならそう展開するんだろうが」
タマ「ニャ?」
妖狐「はぐむーっ!!」パクッ!
タマ「ニャッ!?(えええ!?)」
男「やはりな」
妖狐「ひ、卑怯じゃぞ!!もので釣るなぞ」モグモグ
男「うるせぇ、お前にはまだ色々話すことがあるんだよ。わっちは狐じゃなくて狼だとかな」
妖狐「それはおぬしのミスじゃろ……」
男「否定はしない。……ん?」
妖狐「な、なんじゃ」
男「おま……もしかして泣いてた?」
妖狐「行け花粉!!」
男「ぎゃああああああああ!!」
タマ「ニャー!!(ご主人ーーー!!)」
男「お前の花粉のせいだな。間違いなくな」
タマ「ニャー(ご主人ご無事で?)」
妖狐「……まぁその、なんだ」
男「ん?」
妖狐「どうしてもというのであれば、おぬしの家に住んでやっても良いぞ?んん?」
男「じゃあいいや」
妖狐「ええっ!?」ガーン
男「嘘だよ」
ナデナデ
妖狐「あ……」
男「こんなガキ泣かせるなんざ、いい大人のすることじゃねーよな」
妖狐「……わ、わしは2000歳じゃぞ!」
男「そうかそうか。奇遇だな。俺は年上が好みなんだよ」
終わり?
男「すっかり居ついちまったな」
妖狐「はん。もう前の家の事などとうの昔の話じゃ」
男「おいそれでもお前お社さまかよ」
妖狐「実際にいようがいまいがわからんのじゃから仕方ないじゃろうて」
男「おいおい……そんな事言って、神社が潰れたらどうするんだ?」
妖狐「そ、それは困る!わしの存在がおぼろげになってしまう!」
男「ちょっと見に行くか……もともとボロい神社だったし、不安だ」
妖狐「そうじゃの……」
タマ「ニャー(行ってらっしゃいませご主人様ー。留守はわたくしめにお任せ下さい)」
男「ん?」
妖狐「お?」
「例の神社なう、と……」
「いやー今日も暑いですね」 「おみくじ引いて帰ろう」
「本当にここに?」 「おお、ここが噂の」
「お守り買えば効果があるのかな」 「この日のために一眼レフを」
「俺だー!結婚してくれ!!」
「ここは効果がありそうな神社だ……」
男「……は?」
妖狐「ど、どういうことじゃ……?」
神主「おや?貴方は近所に住んでる……いつもお世話になっております」
男「いえ、俺何もしてませんが……」
神主「いえいえ。有名な退魔師の家系の方だと聞いていますよ。
この町に悪い事が起きないのも、貴方のおかげです」
男「それはいいすぎです」
妖狐「テリーのワンダーランドじゃの」
失礼ですが、この前まではもっとこう……さびれていたというか」
神主「はっはっは!寂れていたのは本当ですし、気を使っていただかなくてもかまいませんよ!」
男「それにしても……何が起こってるんです?」
妖狐「なんか最近妖力が充実しとると思ったら……」
神主「いやですね」
男「はい」
神主「最近ここで『すごく可愛らしい狐っ娘を見た』という噂が立ちまして」
男「は」
妖狐「え」
神主「確かにここの神様は狐様です。それで偶然ではないだろうという話や、目撃証言が二人も出てきたことから噂は広まり」
神主「ついには周辺の町から狐様を見たいがためだけに人がくるようになったんです」
神主「いやぁ、狐様様様ですね!」
男「……」ダラダラ
妖狐「……」ダラダラ
妖狐「……言ったじゃろう、波長があるとな。ここはわしに適応した空間じゃ、偶然目撃者がいてもおかしくない。さらに」
男「さらに?」
妖狐「わしとおぬし、よくしゃべっているじゃろう……?そのせいか、人に気付かれやすくなっているようじゃ」
男「はぁっ!?」
神主「どうか?」
男「いえ!?べっつに!?」
妖狐「まぁここに人が増えるのはいいことじゃ。うーむ……最近確かに寝ざめが良いと思うたわ」
男「……いいのかよ、お前の存在バレかけてんぞ(小声)」
妖狐「むしろ大体的にバレれば、話し相手に困らんのう」
男「そうすればうちから出ていくのか」
妖狐「それが嫌じゃから、大々的にバレることはなさそうじゃの」
男「可愛い奴め」
神主「あの」
男「はっはい!?」
男「おほおっ!?」
妖狐「み、見えるのか!?」
男「見えるんですか!?」
神主「いえ、何も見えませんし、何も聞こえませんよ。ただ……」
男「ただ……?」
神主「なんというかこう、波長のようなものを感じるんです。今までここを切り盛りしてくれていた、大切な神様の」
妖狐「神様じゃなくてすまぬのう」
男「……えーとですね」
神主「はい」
男「こんなこと言うとおかしいと思われるかもしれませんが」
神主「はい」
男「実はその通りです」
妖狐「おおっ!?」
男「いや、見せたい見せたくないじゃなく、『見せられない』そうです。特殊な家系でもない限り……」
神主「そうですか……見た目は?」
男「身長140cm程度の美少女の狐っ娘です」
妖狐「わしは可愛いぞ!」フンス
男「一人称は『わし』です」
神主「……そうですか、似顔絵を書いていただけますか?」
男「え?あまり絵は得意じゃないんですけど……」
神主「じゃあ特徴だけでもいいんです!なんというか詳細に!」
男「え?ああ、はい……」
神主「できれば好きな食べ物などのプロフィールも詳細にお願いします!!」
男「あ、はい……」
神主「謝礼はお支払いします!!」
男「マジですか!?」
ガイド「こちらが有名な、『おきつね大社』です。身長140cm程度のかわいらしいお狐様がお社様だそうですね」
「なんだって……」
「はかどるな」
「これはお守りを買わないと」
「俺はお土産を買わないと!!」
男「……(なんだかんだあって、あの神社は観光スポットになってしまった)」
妖狐「わしとしては、賽銭とお供え物が増えて、嬉しい限りじゃ~」
男「(さらに)」
神主「すみません、これ本日の分です」
ドサ
男「あ、はい。ありがとうございます」
妖狐「なんじゃこの量……正気の沙汰ではないぞ」
男「(うちの妖狐は、毎日それに答えるというアルバイトをしているおかげで、ごくつぶしではなくなった)」
妖狐「……『結婚してください』じゃと?おぬしが出家して修行僧になったらかんがえてやらんでもない」
男「出家して修行僧になれ、と……」カタカタ
妖狐「『恋がうまくいくにはどうしたらいいですか?』じゃと?んなもん当たって砕けてからもういっぺん言いに来い」
男「当たって砕けてからもう一遍言いに来い、と……」
妖狐「おい小僧!これあと何枚あるんじゃ!?」
男「今日の分だけであと66」
妖狐「多すぎないかのっ!?」
タマ「ニャー(おお、熱心なこと)」
妖狐「畜生の事情など知るか!」
男「『うちの作物の調子がよくありません、なんとかしてもらえますか?』」
妖狐「知らん!わしじゃなくて土地神に聞け!」
男「『漫画にしても構いませんか?』」
妖狐「うむかまわんぞ!可愛く描けよ!」
男「『どうして僕の家には美少女が降ってこないのでしょうか?』」
妖狐「美少女が降ってくるような日頃の行いをしてみろ」
男「『レタスとキャベツの違いってなんですか?』」
妖狐「名前に決まってるじゃろ!」
妖狐「まだあるのかの!?」
男「これで最後だ、『大切な人とずっと一緒にいたいです、どうしたらいいですか?』」
妖狐「……」
男「どうした」
妖狐「無理やり家に転がり込んでやれ!そうすればお前のものじゃ!」
終わりッ!!
最後の行みえねえ