1: モナニュースさん:2026/04/04(土) 21:00:00 ID:mona-news
「もう嫌になりました」天皇杯へ予選突破、それでも消えた姉――“きょうだい児”の葛藤 #家族とわたし

北海道で活動しているスポーツ団体「Hokkaido Adaptive Sports(HAS)」の車いすバスケットチームは、今年3月の天皇杯選手権に出場した勢いのあるチームだ。キャプテンとしてチームを北海道予選優勝に貢献したのは、名越沙奈さん(27)。沙奈さん自身に障害はないが、チームには二分脊椎(にぶんせきつい)という重い先天性疾患を抱えながらプレーする妹の麻奈さん(22)がいる。天皇杯に向け選手たちが練習に励もうとする中、「事件」が起きたのは昨年11月のことだった。「もう嫌になりました」との言葉を残し、沙奈さんが練習に顔を出さなくなったのだ。障害を持つ妹の姉として、そしてキャプテンとして奮闘してきた彼女に、一体何があったのか。

◯妹に初めて負けた日
妹とともに天皇杯北海道予選での優勝を喜ぶ名越沙奈さん

車いすバスケットボールは、車いすに乗っていればだれもが一緒にプレーできるスポーツだ。2022年に結成されたHASの登録選手は12人。うち8人は何らかの障害をもっている。元日本代表の石川丈則さんや、パラリンピックアルペンスキー金メダリストの狩野亮さんが在籍する一方で、10代から20代の若い選手7人はみな未経験者だ。

健常者の沙奈さんが競技を始めるきっかけとなったのが、車いすバスケをやっていた妹・麻奈さんの存在だった。練習をしていた麻奈さんを車で迎えに行った日のこと。HAS代表で、監督兼選手の齊藤雄大さん(37)から声をかけられた。

「お姉ちゃん、車いすに乗ってディフェンスやって」

こうして沙奈さんは、妹の練習相手として車いすバスケを始めることになった。障害を持つ妹には、それまで何をやっても負けることはなかった。それなのに、車いすに乗った途端、立場が逆転した。何度立ち向かってもあっという間に脇をすり抜けられ、まったく歯が立たない。沙奈さんの負けず嫌いな性格に火がついた。

バスケットボールは、体育の授業でやったことがあるだけの素人。それでも他の若いメンバーの中に経験者がいなかったので、話し合いでキャプテンに選ばれた。

「沙奈が一番車いすバスケを楽しそうにやっていたし、新しいチームだったので中途半端な気持ちではチームが続かない。みんなにやろうと言えるのは沙奈だけだったと思う」と齊藤さんは振り返る。

◯沙奈の日常
車から妹を抱きかかえて降ろす沙奈さん

沙奈さんが4歳のときに、麻奈さんが生まれた。心待ちにしていた妹は、重度の障害を持って生まれてきた。歩くことができず、ずっと車いすで生活してきた。沙奈さんはそんな妹をこう見ている。

「子どもの頃から、たまたま歩けないだけで、普通のきょうだいだと思っています。口げんかもしますし。障害があってもなくても同じだと思ってる」

沙奈さんは、北広島市の実家で両親や妹と暮らしている。専門学校を卒業後、札幌市内の婦人科クリニックで医療事務員として働く。練習は基本的に週末なので、仕事以外の時間のほとんどを妹とともにHASの活動に割いている。

HASで子どもたちを指導する真駒内養護学校の中山慶一教諭は、そんな沙奈さんの姿をこう見ている。

「家族が支えるということが当たり前すぎて、自分がやりたくてそこにいるのか、妹のためにそこにいるのか本人がわからないくらい、当たり前の日常になっているんだと思います」

◯「きょうだい児」という立場
沙奈さん自身に成長を促す齊藤さん

「きょうだい児」という言葉がある。障害のある子どもの兄弟姉妹のことを指す。英語ではシャドウ・チャイルド=影に隠れた子どもと表現される。障害のある子どもがいる家庭では、親の時間や関心が、どうしてもその子のサポートに割かれることが多いからだ。

きょうだい児たちは親に負担をかけまいと、自分のことを後回しにしながら成長する傾向がある。自分の人生を自分で決められないことや、結婚や親が亡くなった後のことに不安を感じる人も少なくない。

沙奈さんは自分自身のことをどう思っているのだろうか。「きょうだい児といわれることもあると思うんですけど、別に何とも思わなかった」

ただ、齊藤さんの見方は少し違う。練習中でも自分や周りの選手たちのことよりも、妹に厳しい言葉を投げかけ、成長させようとする姿を見てきたからだ。

そんな沙奈さんに対して、齊藤さんはこんな思いを持っている。「妹のために生きるのはダメ。社会では妹をサポートするやさしいお姉ちゃんとして見られるかもしれないけど、スポーツは公平なもの。お姉ちゃんとしてではなく、1人の人間、1人の選手としてコートに来てほしい」

妹の麻奈さんは昨年8月、車いすバスケットボールの女子U25選抜に選ばれた。自分がサポートしてきたはずの妹は、着実に自らの道を歩み始めていた。

「なんで麻奈が選ばれるの?私は?」

麻奈さんがU25の大会から戻ってきてからしばらくの間、二人の間に言葉はなかった。

◯キャプテンに求められてきたこと
パラスポーツイベントを担当するのもキャプテンの役割

HASの車いすバスケチームは、車いすで生活する子どもたちがスポーツを楽しめる環境づくりやパラスポーツイベントの運営などに行政や企業とともに携わっている。こうした社会活動によって得られた謝金は、用具の購入や遠征費などに充てられる。

齊藤さんにしてみれば、障害を持つ子の相手に慣れている沙奈さんは、車いすの子どもたちが多く参加する活動では頼りになる存在だ。きょうだい児であることのいい側面に見える一方、齊藤さんには一つの懸念があった。それは沙奈さんが周りに助けを求められないことだ。

活動の幅を広げるほど、バスケの練習以外にもやらなければならないことが増えてくる。だれにでもできそうなことはほかのメンバーに割り振ればいいのに、沙奈さんは何でも自分で抱え込んでしまうのだ。

自分が誰かを助けることには慣れているものの、自分が誰かからの助けが必要なときにも、「自分で何とかしなければ」という責任感に駆られてしまう――。これは、きょうだい児に一般的に見られる一つの特性と重なる。

そんな時に、「事件」は起きた。東京での天皇杯本大会への出場を決め、チームはあわただしく準備を進めていた昨年11月。沙奈さんは「もう嫌になりました」との言葉を残し、仲間の前から姿を消してしまったのだ。

きっかけは、齊藤さんとのメッセージのやりとりだ。「11月のタスクが多い中で、沙奈が僕に怒られて、グループから退出してしまった。そこから誰とも連絡が取れない」。齊藤さんはチームにこう説明をした。沙奈さんは、天皇杯に向けた練習日程や東京までの飛行機やホテルの手配を1人で抱え込んでいた。そんな時に齊藤さんから厳しい言葉を浴びせられ、心が折れてしまったようだ。

HASの中心選手の1人である三元大輔さん(36)は「沙奈は何年もキャプテンとして頑張ってきたから、たまたまそういうタイミングだったのだと思います。がむしゃらにやってきて、少しずつ自信がついてきた中で、そのプライドが傷つけられたんじゃないかな」と推察する。

チームからの働きかけもうまくいかず、2026年が明けても沙奈さんは戻って来なかった。チームはキャプテン不在で大きな不安を抱えていた。

沙奈さんの不在を、どう受け止めたらいいのか。前出の中山慶一教諭は、きょうだい児の観点からこう語っていた。

「私はこのままフェードアウトするのも本人にとってはいいと思うのです。もしかしたら、妹をサポートする責任感から、チームに残らないといけないと思っているのかもしれない。でも、自分の人生なんだから本当にやりたいことをやるべきなんです。今回はそのいい機会なのかもしれない」


沙奈さん不在のきっかけをつくった齊藤さんは「自分の力だけで難しいんだったら、他人の力も使いながら復帰できればいいんじゃないかな。辞めるとか辞めないとか、そういう話じゃないと思うんです。沙奈が自分自身とどう向き合うかどうかだと思うんです」という。


一方、妹の麻奈さんは、こう突き放していた。「みんなが戻ってこいと言っているのに戻って来ないならば、こっちが迷惑だからさっさと辞めろ」。チームはすでに、別のメンバーを新キャプテンに選んでいた。

戻るべきか、戻らざるべきか――。沙奈さんは、葛藤の中で、眠れぬ夜を過ごしていた。

ソース元より一部抜粋。記事全文は下記リンクからお願いします。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/7367c034c40a2974797a6e8c13a24c7bc30a45b4



















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